埼玉県虐待禁止条例の改正案とは?批判が殺到!禁止行為の内容や県民の反応を解説

県虐待禁止条例改正案
2023年10月に埼玉県議会に提出された県虐待禁止条例改正案は、「虐待」の範囲を超え、子どもを自宅や車内などに放置することを禁止する内容で、波紋を呼びました。

全国に広がった反対の世論を受けて、取り下げに至ったのですが、「なぜ改正案を提出したのか」「誰が内容を考えたのか」などと、県民の不満はおさまるところを知りません。

本記事では、そんな県虐待禁止条例改正案の内容について解説します。改正案への県民、国民の反応や、改正案提出を主導した県議会議員についても触れますので、ぜひ参考にしてください。

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埼玉県虐待禁止条例の改正案とは?


県内外から批判が殺到し、撤回された埼玉県虐待禁止条例改正案。その問題の根幹は何だったのでしょうか。

ここからは、そもそもの県虐待禁止条例の内容について解説するとともに、改正案の中身や提出から取り下げまでの経緯について解説します。

そもそも県虐待禁止条例とは?

埼玉県虐待禁止条例は、児童と高齢者、障害者の権利を守るため、虐待の予防や早期発見・対応について明記した条例です。2017年の県議会6月定例会で可決・成立し、18年1月に施行されました。

同条例は理念条例の側面が強いものの、養護者に対し、児童と高齢者、障害者の安全の確保に配慮すべきこと(安全配慮義務)を明記しているのが特徴です。例えば、第6条3項には、養護者は、満18歳に満たない児童の安全を守るため、深夜(午後11時から翌日の午前4時)までの間に児童を外出させてはならないといった旨が明記されています。

同条例の特徴は、安全配慮義務だけではありません。第13条は、県が市町村と連携し、虐待の通告・通報・届出・相談しやすい環境を整備しなければらない旨が明記されました。これを受け、県は2018年10月1日、児童・高齢者・障害者の虐待の通報を24時間365日受け付ける県虐待通報ダイヤル「#7171」を開設しています。

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虐待児童への禁止行為が列挙した改正案の内容とは?

虐待児童への禁止行為が列挙した県虐待禁止条例の改正案は2023年10月4日、県議会9月定例会で、第25議案として自民党県議団により提出されました。

自民党県議団は近年、「ひきこもり支援に関する条例」(22年)をはじめとする全国初の条例を議会に上程、成立させてきた経緯があります。このため、自民党県議団は今回の改正案も成立に自信を持っていたことでしょう。

しかし、議会に上程された改正案には、子育ての家庭の実態と乖離した内容が記載されていました。

具体的には、第6条の2で、保護者に対して小学3年生以下の児童についての「放置」を禁止し、小学4年生から6年生までは努力義務だと明記されていました。

同条で指摘される放置とは、子どもたちだけの自宅での留守番や登下校などです。ほかにも、自民党県議団は、子どもたちだけで公園などで遊ぶことや、子どもだけを家に残してゴミ捨てに行く行為を放置と定義しています。

現実的に考えると、この条例案を厳密に実行し、放置を回避するのは、難しいと言わざるを得ません。特に、共働き家庭やシングル家庭が放置を回避するのは、なおのこと不可能です。専業主婦の場合でも、学童クラブや放課後児童クラブといったサービスを利用しなければ、条例に違反してしまう状況が容易に想定されます。

詳しくは後述しますが、このように子育ての実情にそぐわない内容が明記されていることから、子育て世帯を中心に改正案への批判が相次いだのです。

改正案の提出から取り下げまでの経緯

自民党県議団は2023年6月、県虐待禁止条例の一部改正検討プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、条例改正に向けて議論を重ねてきました。7月7日に開催された第2回のPTの会合で内容を固め、同月から団のホームページで県民からの意見公募を1カ月間実施。意見公募を8月に締め切った後、9月開催の会合で、9月定例会への改正案提出を確定させました。

その後、自民党県議団は10月4日、改正案を県議会に提出。6日の県議会福祉保健医療委員会で自民、公明両党県議団の賛成により可決され、13日の議会最終日に採決される予定でした。

しかし、さいたま市PTA協議会をはじめ、各方面から改正案への批判が殺到。批判を受けて、自民党県議団団長を務める田村琢実議員は10日、改正案の取り下げを正式に表明しました。

改正案への県民、国民の反応

改正案に対しては、子どものために必要との声が一部あがった一方、子育ての状況を踏まえると、厳しすぎるといった声が相次ぎました。オンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」に寄せられた声を一部紹介します。

・子どもだけの登下校禁止。
・お留守番禁止。
・おつかい禁止。
・それを見つけた人は通報義務がある。
子どもや親を家庭に縛り付ける最悪の条例だと思います。こどもの遊ぶ自由を奪わないで欲しい。

置き去り死を防ぐという趣旨自体は理解できるものの、虐待とされる行為の幅があまりに広すぎると思います。
特に、小学生であっても1人で留守番してはいけない、友達と子どもだけで外で遊んではいけない、1人で習い事に行ってはいけない、登下校も子どもだけで行ってはいけない、ゴミ捨てのために一時親だけが外に出ることは許されない等は行き過ぎであり、見直しを強く求めます。

私もシングルマザーで、他県に住んでいますが、もしこの法案が通ってしまったら、追い詰められる親子が増えるだけだと思います。

どうか、子どもたちの未来を考えてくれるなら、子供も親も応援できる様な支援体制や気軽に預かってもらえたり、相談できる場所を増やしてもらいたいです。
子どもも家族も安心して、家族以外とのつながりが持てることは虐待防止や家族だけで抱え込むことが減ると思います。

「埼玉県 子どもだけの登下校禁止条例!!【改正案取り上げ】署名で反対を表明できます。」と銘打った署名ページには、10万4,113人の賛同の声が寄せられました。

このほか、埼玉県にも800件を超える意見が寄せられ、そのほぼ全てが反対意見だったとのことです。

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改正案の提出はだれが主導したのか?

改正案の提出を主導したのは、自民党県議団の埼玉県虐待禁止条例の一部改正検討PTです。PTの構成員については、県議会事務局や自民党県議団に問い合わせましたが、個別の議員が把握しているとの理由で、明確な回答をいただけませんでした。

そこで、議会提出時の資料や改正案を可決した県議会福祉保健医療委員会の名簿から、賛成議員や主要メンバーを明らかにします。また、主要メンバーの1人で、各記者会見にも応じた自民党県議団団長の田村琢実議員の人物像についても紹介します。

主要メンバーや賛成議員

10月4日の定例会に提出された県虐待禁止条例改正案の議案書には、田村議員や、PT事務局長の小久保憲一議員をはじめ、52人の議員の名前が並んでいます。

県虐待禁止条例改正案の議案書

県議会の定数は93人であるため、過半数の議員が改正案に賛成していたと言えます。

また、改正案を可決した県議会福祉医療委員会の名簿は次の通りです。

同委員会で改正案に賛成したのは、委員長を除く、自民、公明両党の議員7人でした。このため、埼玉県議会公明党議員団(9人)も改正案に賛成している可能性が高いと言えるでしょう。

改正案の提出を主導した田村琢実県議とは?

田村琢実県議は、さいたま市出身の政治家です。2007年に県議選に初当選し、19年4月には4期目当選を果たしました。現在、県議会自由民主党議員団幹事長として、防犯や経済、教育といった分野で政策推進に取り組んでいます。

田村県議は一見すると新進気鋭の政治エリートのように見えますが、公私ともに問題の絶えない人物です。

2020年には、2000万円超のセンチュリーを公用車として使用している事実がフジテレビによりスクープされました。当時の報道によれば、センチュリーは県が支給したもの。このため、田村議員がセンチュリーを使用するのは、県側にも責任があります。しかし、田村議員は、税金の無駄遣いという県民からの批判に対し、「意味がわかりません」と主張したため、反発の声が相次ぎました。

また、直近2023年10月には、週刊文春によって、自身が設立した個人企業に政務活動費約1,700万円を環流させた疑いがあることが報道されています。

一方、プライベートでは同年10月、週刊文春に県議団の受付嬢との不倫疑惑が報道されました。不倫疑惑に対して田村議員からの釈明はないものの、ネット上を中心にバッシングが続いています。

まとめ

県虐待禁止条例改正案の騒動から垣間見えるのは、政治が県民のためではなく、政治家の実績づくりになっているという実態です。このため、大バッシングを受けるような条例の改正案が提出されてしまうのだと推察されます。

しかし、政治家が増長するのは、選挙で政治家に投票する県民の責任でもあります。良い政治を促すために、県民が普段から政治家の行動を監視するとともに、良い政治家を選ぶ投票行動が必要なのかもしれません。

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